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大阪地方裁判所 昭和42年(手ワ)2717号 判決

原告 大商自動車工業株式会社

右訴訟代理人弁護士 田中征史

被告 藤本元恵

右訴訟代理人弁護士 渡部繁太郎

主文

被告は原告に対し次の金員を支払え。

金一、三七〇、九三一円とこれに対する昭和四二年九月一〇日から完済まで年六分の割合による金員。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮りに執行することができる。

事実

〈全部省略〉

理由

〈前略〉。

被告は、原告が被告に対し有する右(一)(イ)の手形金債権に対する遅延利息額については、手形法所定年六分の率によるべきものであるという趣旨の主張をしているので一応この点について判断する。

貸金債権についての利息及び遅延利息の利率については、利息制限法一条第一項、四条第一項にそれぞれ規定され、この利率を超える約定利率は、その超過部分につき無効とされることはいうまでもなく、この理は、手形貸付がなされたときにおける該手形不渡り後の約定遅延利息についても適用されることは多言を要しないと考えられるけれども、いわゆる手形割引がなされた場合 本件手形が割引手形であることは前示のとおりである における、不渡り手形金に対する約定遅延損害金の利率についても適用があるかどうかに関しては、いささか問題があると思われる。即ち、手形割引における割引料率については利息制限法の適用がないこと、及び割引手形が不渡りとなった場合に、不渡り手形金に対する満期以後の遅延損害金率につき、手形法所定率たる年六分の割合を超える約定をすることが、有効であることはいうまでもないけれども、遅延損害率については、割引料率に利息制限法の制限がないのと異なり、同法の適用があり、約定率が同法一条第一項所定率の二倍を超える場合には、同法四条第一項による制限を受け、右制限超過部分は無効であると解すべきである。けだし、割引手形が不渡りとなった後、手形債務者が手形金債務を目的として準消費貸借契約を帰結した場合には、同法の適用を受けるのにかかわらず、準消費貸借契約をしないで、手形金債務につき遅延損害金の約定をした場合に、同法の適用を受けないとすると、両者の間にあまりにも均衡を失するに至ると考えられるからである。

以上説示したとおり、不渡りの割引手形金に対する遅延損害金の約定利率は年六分を超えてこれを定めることができるけれども、その最高限については同法の制限を受けるといわねばならないところ、本件割引手形金に対する約定遅延損害金の利率は一カ月三分(年三割六分)にして、同法一条第一項所定率の二倍以下であることが明らかであるから、被告の前記主張は採用することができない。

よって、被告の原因関係欠除の抗弁を排斥する。〈以下省略〉。

(裁判官 下出義明)

〈以下省略〉

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